市場のにぎわい


■ 市場のにぎわい

太陽が空の中央へと昇る頃、
とまと王国の心臓部ともいえる中央市場が、ゆっくりと目を覚まし始めます。

朝の静けさをまとっていた畑とは対照的に、市場は人の気配によって形づくられる場所です。
石畳の通りに荷車の音が響き、籠の中でとまと同士が軽く触れ合う、やわらかな音が重なります。

屋根付きの回廊の下には、木製の屋台が整然と並び、
布をかけた台の上には、朝露を拭き取ったばかりのとまとが丁寧に並べられていきます。

赤。
深紅、朱、薄紅。
光を帯びたもの、影を含んだもの。

そして赤だけではありません。
黄金色のとまと、まだら模様の品種、小さな真珠のようなミニとまと。
それぞれが「自分はここにいる」と主張するかのように、静かに輝いています。

やがて、売り手たちの声が交わり始めます。

「今日は甘いぞ」
「朝一番の畑から来た」
「この色を見てみなさい」

けれど、その声は決して押しつけがましくありません。
とまと王国の市場では、売ることより、伝えることが大切にされているからです。

このとまとが育った土の話。
昨日の天気の話。
少し水をやりすぎた反省や、今年は出来がいいという誇らしさ。

買い手は、それを聞きながら、とまとを手に取ります。
指先で重さを確かめ、香りを感じ、
時には目を閉じて、その実が育った時間を想像します。

市場には、老若男女が集まります。
毎日通う料理人、
孫のために一番甘い実を探す祖母、
初めて市場に来た旅人。

子どもたちは、試食用に切られたとまとを頬張り、
「これ、太陽の味がする!」と目を輝かせます。

それを聞いた大人たちは笑い、
「よくわかったな」と誇らしげにうなずきます。

市場の奥へ進むと、とまと加工品の屋台が並びます。
干しとまと、瓶詰めのソース、香草と合わせた保存食。
どれもが、時間を味方につけたとまとの姿です。

香りはさらに濃くなり、
酸味と甘味が混ざり合った空気が、市場全体を包み込みます。

正午が近づくと、市場は最高潮のにぎわいを迎えます。
笑い声、交渉の声、籠を置く音、包丁がまな板に当たる軽快なリズム。
それらが混ざり合い、ひとつの「市場の音楽」を奏でます。

ここでは、急ぐ者はいません。
値段を巡って声を荒らげることもありません。
なぜなら、誰もが知っているからです。

――良いとまとは、必要な人のもとへ、自然と渡っていく。

夕方になると、屋台は少しずつ片づけられます。
売れ残ったとまとは、隣人に分けられ、料理屋へ回り、
あるいは明日の種として選別されます。

市場は再び静けさを取り戻しますが、
その石畳には、一日の会話と笑顔の余韻がしっかりと残ります。

市場のにぎわいとは、
単なる商いではありません。

それは、
人と人、人と自然、人ととまとが交わる場所
とまと王国が「国」として息づいていることを、最もはっきりと感じられる場所なのです。