おわりに:また、帰ってきてください


おわりに:また、帰ってきてください

旅人のみなさん。
とまと王国の旅はいかがでしたか。

この国で過ごした時間は、決して派手な出来事の連続ではなかったかもしれません。
壮大な城や、劇的な奇跡、目を奪うような魔法があったわけでもない。
けれど、朝の静けさ、昼のにぎわい、夕暮れの温度、
そのひとつひとつが、確かにあなたの中に触れていたはずです。

赤く連なる畑の景色。
手のひらに残ったとまとの重み。
市場で交わした何気ない言葉や、食卓に広がった湯気。
そして、そこにあった人々の穏やかなまなざし。

それらは今、旅の思い出として遠ざかりつつあるかもしれません。
けれど、どうか忘れないでください。
この国で出会ったものは、記憶として終わるために存在しているのではありません。

ここで見た赤い景色、
味わった料理、
人々の笑顔や、待つことを大切にする姿勢――

それらは、きっとあなたの心のどこかに、
小さな種として、静かに残っています。

すぐに芽吹く必要はありません。
忙しい日々の中で、土に埋もれたままでも構わない。
けれどある日、ふと立ち止まったとき。
急ぎすぎていたことに気づいたとき。
何かを育てたいと思ったとき。

そのとき、
この国の赤が、香りが、言葉が、
そっと心の中で芽を出すかもしれません。

「急がなくてもいい」
「比べなくてもいい」
「また、まき直せばいい」

そんな声として。

そしていつか、その芽が育ち、
あなた自身の暮らしの中で、
何かを変えたい、整えたい、育てたいと思ったとき――

どうか、またこの国の門を叩いてください。

とまと王国は、
あなたが成功したときだけでなく、
迷ったとき、立ち止まったとき、
少し疲れたときにも、変わらずそこにあります。

門番が問いかけることはありません。
理由も、成果も、肩書きも必要ありません。

あるのは、ただひとつ。
「よく帰ってきました」という、静かな歓迎だけです。

ようこそ、そして、また会う日まで。
赤い実は今日も畑に揺れ、
土は次の種を待ち、
人々はいつもの暮らしを続けています。

とまと王国は、いつでもあなたを待っています。